先日ご紹介した「妙満寺×安珍・清姫の伝説」。激しい情念の物語が残る寺ですが、
私の記憶にある妙満寺は、どこまでも穏やかな色彩に包まれた場所です。

それは、3年前のこの季節のことでした。
当日はあいにくの曇り空で、直前まで雨が降っていました。
けれど、山門をくぐった瞬間に目の前に飛び込んできた景色に、思わず足が止まりました。
白、薄紅、鮮やかな桃色。
幾重にも重なるツツジの花が、曇り空の下でしっとりと浮かび上がっていました。
まるで、そこだけが静かに発光しているような景色。
晴れた日の鮮やかさとは違う、雨上がりだけが持つ柔らかな光でした。

そんな色彩の中を歩いていると、
境内でひときわ異国的な空気をまとった建物が現れます。
インドの寺院を思わせる「仏舎利大塔」。
京都のお寺の中で突然異国に迷い込んだような、不思議な感覚。
初めて見た時、私はしばらくその場から動けませんでした。

そして、妙満寺を訪れたなら絶対に外せないのが、
俳諧の祖・松永貞徳が造営した名庭「雪の庭」です。
方丈には赤い毛氈(もうせん)が静かに敷かれた特等席がありました。
その赤い毛氈(もうせん)の上に腰を下ろし、庭を眺めていると、
気づけば頭の中の雑音が、ひとつずつ静かに遠のいていきました。
目の前に広がる緑の濃淡。
遠くに重なる比叡山。
耳に届くのは、濡れた葉がふと揺れる音だけ。
何かを考えるでもなく、
ただ「ここにいる」ことが心地よい。
そんな時間でした。
これこそが、大人の京都さんぽの、一番の贅沢かもしれません。
このお庭は、その名の通り「雪の景色」が最も美しいとされています。
新緑とツツジの鮮やかな世界を知った今、もしも冬の雪が積もった日にここを訪れたなら、
一体どれほど深く、澄んだ静寂に出会えるのだろう――。
そんなまだ見ぬ冬の日の「歴史の吐息」に、早くも想いを馳せてみたり。

もし心が少しざわつく日があったなら、
雨上がりの静かなお寺を歩いてみてください。
晴れの日には出会えない、
やわらかな静寂があります。
妙満寺の雨の匂いを思い出すたび、
私は今でも、あの日の曇り空に少し救われた気持ちになるのです。




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