門前の賑やかな寺町商店街は
普段からよく通るのに、実はこれまで
一度もお参りしたことがなかった
法華宗の大本山「本能寺」。
今回、ようやく初めて
その境内へ足を踏み入れました。
一歩中へ入ると、外の賑わいからは
想像もつかないほど境内は広く、
空気もとても穏やか。
何組かの参拝客がおられましたが
騒がしさはまったくなく、
ゆっくりとした時間だけが流れています。
お参りを終えて歩いていると、
竹箒で境内を掃除されていたお坊さまが、
目を合わせて「こんにちは」と
爽やかに挨拶してくださいました。
その一言だけで、
なんだか心までほっと和らぎます。
歴史編でもご紹介した信長公の供養塔。
そのすぐそばには、大きく立派な
「大イチョウ」の木がそびえていました。

この木には、江戸時代の天明の大火の際、
幹から水が噴き出して炎を鎮め、多くの人々を
救ったという不思議な逸話が伝わっています。
「へぇ……水が噴き出した木かぁ。
一体どの辺りから出たんやろ?」
そう思った私は、大イチョウの周りを
ぐるぐる回り、下から見上げたり、
横からのぞき込んだりと、
大真面目に木を観察していました。
すると、ふと視線を感じて顔を上げると、
通りかかった女性が私を見ながら半笑いに……。
(あっ、怪しい人やと思われたかも💦)
急に恥ずかしくなり、
何事もなかったような顔をして
その場を離れました(笑)。
本当は塔頭の御朱印も
いただきたかったのですが、
この日は受付の案内がなく、またの機会に。
門前に案内が出ている日が
チャンスだそうなので、
次回の楽しみに取っておこうと思います。

途中で立ち寄ったお寺では、
まだ少しだけ紫陽花が咲いていました。
せっかくだからと写真を撮ったのですが、
あとで見返して思わずびっくり。
本能寺の本堂も、このお寺の写真も、
「どうやったらこんなにボケるん!?」
と自分で突っ込みたくなるくらい
見事なピンぼけ写真ばかり(笑)。


この日は四条烏丸に用事もあったので、
少し歩みを早めて「宝蔵寺」へ向かいました。
本能寺とは対照的に、
街なかにひっそりと佇む小さなお寺。
山門をくぐると、肩の力が
ふっと抜けるような優しい空気に包まれます。
お参りを済ませ、楽しみにしていた御朱印へ。
種類がとても豊富で、
「うわぁ、全部ほしい……!」
と思わず悩んでしまいました。
ちょうどこの日は「寅の日」。迷いに迷って、
力強い虎の御朱印をいただくことにしました。
ホームページの御朱印カレンダーを見ると、
あの有名な若冲のドクロ御朱印を
いただける日も載っているそうです。
「次は絶対、その日に来よう。」
そんな次の楽しみもできました。

境内を歩いていると、
小さな池でたくさんの亀たちが
のんびり甲羅干しをしていました。
「かわいいなぁ」と少し近づいた、その瞬間。
亀たちが一斉に、
ものすごい速さで頭をシュッと甲羅の中へ。
でも、よく見ると手と足はそのまま外(笑)。
(頭隠して尻隠さず……いや、手足隠さずやん!)
思わず心の中で突っ込んでしまいました。
生きる苦しさを笑いに変えてきた
町人文化のお寺らしく、小さな亀たちまで、
どこかユーモラスに見えてしまいます。

「さぁ、本当に用事へ行かなきゃ!」
そう思って歩き出したのですが、
宝蔵寺のすぐ近くにある極楽寺の前で、
また足が止まりました。
門前には風に揺れる立派な七夕の笹。
その横には色とりどりの短冊とペンが用意され、
「ご自由にどうぞ」と書かれています。
……こんなの、素通りできるわけがありません(笑)。
子どもの頃に戻ったような気持ちで
短冊に願い事を書き、そっと笹へ結びました。
思いがけず季節の行事にも参加できて、
少し得をした気分です。


四条通へ出ると、街はすっかり祇園祭一色。
提灯が並び、お店やスピーカーからは
「コンコンチキチン」と祇園囃子が流れています。
以前、滋賀県出身の友人に
「この音を聞くと夏が来たって感じがするよね」
と話したところ、
「そうか?何とも思わへんけど。」
と、あまりにも冷静な返事が返ってきました(笑)。
あのとき初めて、
「この音に夏を感じるのは、
京都に住んでいる人
ならではなのかもしれないな」
と気づいたのを覚えています。

烏丸で用事を済ませたあと、
この日の締めくくりに向かったのは、
現在の本能寺から離れた場所にある
「元本能寺跡」。
家を出たときは曇り空だったので、
「今日は大丈夫やろ」と
日傘を置いてきたのですが、
これが大失敗でした。
昼過ぎには見事な晴天。
京都の夏の日差しが
容赦なく腕を照りつけます。
しかも、現在の本能寺から元本能寺跡までは
思っていた以上に遠く、
歩いても歩いてもなかなか着きません。
汗だくになりながらようやく石碑の前へ。
信長公が最期を迎えた場所は、
いまでは住宅や学校が建つ
静かな街の一角になっていました。

腕の痛さと足の疲れを感じながらも、
「ここから今の本能寺へ
歴史が受け継がれていったんだな」と思うと、
不思議と疲れも心地よく感じられます。
大イチョウをぐるぐる観察して怪しまれ、
写真は見事にピンぼけ。
亀には心の中で突っ込み、七夕では寄り道をし、
最後は炎天下を汗だくで歩くことに。
完璧な旅ではありませんでしたが、
生きる苦しさを笑いに変えてきた
町人たちのように、小さなハプニングまで
楽しい思い出へ変えてくれた、
なんとも京都らしい夏の一日でした。
みなさんも京都の街を歩くときは、
ぜひ有名なお寺だけでなく、
小さなお寺にも寄り道してみてください。
そして、7月の京都だけは、
曇り空でも日傘を忘れずに(笑)。

(本能寺300円)2026年7月

(宝蔵寺500円)2026年7月



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