二寧坂・産寧坂から八坂の塔へ。賑わいの坂道で、私が足を止める夕暮れ

二寧坂、産寧坂、八坂の塔 京在住ノート

前回ご紹介した清水寺の物語。その余韻を胸に、
参道の坂をゆっくり下っていくと、京都で最も美しいと称される石畳の道――
**二寧坂(二年坂)産寧坂(三年坂)**へと続きます。

ここは連日、世界中からの旅人で賑わう華やかな場所。
けれど在住者の私にとっても、歩くたびに背筋がすっと伸びる、大切な風景のひとつです。

ひょうたんの言い伝え

この坂道には、昔から少し怖い言い伝えがあります。
「二年坂で転ぶと二年以内に、三年坂で転ぶと三年以内に亡くなる(あるいは寿命が縮む)」

子どもの頃、思わず足元を見つめ直した方も多いのではないでしょうか。
でも、実は続きがあります。

もし転んでしまっても――瓢箪(ひょうたん)を授かれば厄除けになる、というもの。

産寧坂の坂下には、今も瓢箪を扱うお店が静かに佇んでいます。

なぜひょうたんなのか。
それは、ひょうたんが「邪気を吸う」とされ、
また倒れても起き上がる姿が「再生」や「無病息災」を象徴しているから。

もしかするとこの少し恐ろしい噂は、
「石畳は滑りやすいから、どうか足元に気をつけて」

という、いにしえの京都人のやわらかな警告だったのかもしれません。
そう思うと、軒先に揺れるひょうたんが、どこか愛おしく見えてきます。

坂の途中で、ふと視線を上げると――
瓦屋根の向こうに、圧倒的な存在感で佇むのが
八坂の塔(法観寺)

五重塔の黒い輪郭が、空を切り取るように浮かび上がる瞬間。
この景色を見るたび、京都は“時間の層”の上に立っている街なのだと感じます。

近年は、町家を活かしたスターバックスや、和小物店、お香専門店など、新しい息吹も加わりました。
けれど夕暮れになると、不思議なほど静けさが戻ってきます。

私の小さなおすすめは、日が落ちる少し前。

店の灯りがひとつ、またひとつとともり、
観光客の波がゆっくり引いていく時間。

家路を急ぐ下駄の音が、石畳にやわらかく響き、
八坂の塔は紫がかった空に黒い影となる。

その遠くに、ほのかに光りはじめる京都タワー。

古い瓦屋根と、近代の灯り。
同じ夕焼け空の下で、どちらも静かに溶け合う瞬間。

それが、私が何よりも愛する京都の「吐息」です。

私のお気に入りの場所から見上げた、ある日の夕暮れ。

古い瓦屋根の向こうに佇む八坂の塔と、遠くで瞬きはじめる京都タワー。

新しいものと古いものが、同じ空の色に溶け合う、このひととき。
坂道は、今日も静かに誰かの物語を重ねています。



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