恵心院。初夏の花の寺、石臼の御朱印と「鹿や!」の帰り道

恵心院 京在住ノート

宇治上神社での千年のタイムワープを
たっぷりと楽しんだあと、
私はすぐ近くにある
「恵心院(えしんいん)」へと
バイクを走らせました。

宇治橋や宇治神社のすぐそばに
ひっそりと佇むこのお寺は、
『源氏物語』宇治十帖で、入水を図った
浮舟を救い上げた横川僧都のモデルとも
伝わる恵心僧都・源信ゆかりのお寺です。

そんな文学のロマンを秘めた恵心院ですが、
地元では四季折々のお花が楽しめる
「花の寺」としても親しまれています。

境内は決して大きくありませんが、
小さくて愛らしく、緑がいっぱいで、
訪れるたびに心がすーっと
軽くなるような大好きな場所です。

以前、水仙の季節に訪れたときには、
参道や境内いっぱいに可憐な水仙が咲き誇り、
凛とした椿や甘い香りの蝋梅も見事でした。

「あのときのお花、綺麗やったなぁ。
今は何が咲いてるんかなぁ?」

そんな冬の思い出を胸に、初夏の山門をくぐります。

境内をゆっくり歩いてみると、新緑のなかに
色鮮やかな紫陽花が優しく咲いていました。

そして、よく見ると
アガパンサスの蕾があちらこちらにたくさん。

「この蕾が一斉に開いたら、
境内は涼やかな青色に包まれるんやろうなぁ」

まだ見ぬ夏の景色を想像するだけで、
なんだか嬉しくなってしまいます。

木陰には椅子やテーブルも置かれていて、
お花を眺めながら
のんびり過ごせるようになっています。

「いつか私も、ここでぼーっと過ごしてみたいなぁ」

そう思うのですが、お寺へ来ると私は毎回、
写真を撮ることに夢中になりすぎてしまいます。

今回も例外ではありませんでした(笑)。

お庭を堪能したあとは、もうひとつのリベンジへ。

実は前回来たとき、
どこで御朱印をいただけばいいのか分からず、
そのまま帰ってしまった
苦い思い出があったのです。

今回はしっかり観察すると、
玄関の横に小さなインターホンを発見。

「ここを押してもいいのかな……」

少しドキドキしながら
ピンポンと押してみると、
お寺の方が優しく対応してくださいました。

よかった。これで前回の謎がひとつ解決です。

そうして今回、
ついにいただくことができた念願の御朱印。

そこに押されていたのは、
なんと抹茶を挽く「石臼」のスタンプでした。

さすがはお茶の街・宇治。

その土地ならではの遊び心に、
思わず顔がほころびます。

恵心院には、
いつ訪れても時間がゆっくり流れています。

時折、新緑の間を抜けてくる風が
頬を優しく撫でていくたびに、
宇治上神社で感じた興奮や高揚感が、
じんわりと落ち着いていくようでした。

すっかり心を癒やされて、お寺をあとにします。

帰りは車の多い道を避けて、
緑に囲まれた静かな山道へ。

バイクに乗っていると、
この道の気持ち良さが全身で分かるんです。

木々のトンネルに入った瞬間、
周囲の空気がすっと冷たくなる。

天然のクーラーのなかを走っているようで、
本当に気持ちがいいのです。

そんな新緑の風を楽しみながら走っていた、
その時でした。

目の前の草むらがガサッ――。

「えっ!?……鹿や!!」

なんと、本物の野生の鹿が
ひょっこり姿を現したのです。

宇治上神社ではうさぎさんの話を
たくさんしていたのに、
まさか最後に出迎えてくれたのは
鹿さんだったとは(笑)。

千年の歴史のロマンに触れ、
紫陽花とそよ風に癒やされ、
最後は鹿に驚かされる。

なんとも私らしくて、ドラマチックで、
愛おしい初夏の宇治散歩となりました。

みなさんも宇治を訪れた際は、
ぜひ宇治上神社から恵心院への
ルートを歩いてみてください。

運が良ければ、帰り道に山の住人が
見送ってくれるかもしれませんよ。

(2026年6月 500円)


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