昨日ご紹介した、下御霊神社の「御霊信仰」の物語。
あの静かな鎮魂の歴史が、いまも京都の街の中で、
こんなにも熱を持って息づいているのだと感じた出来事がありました。

先日、私はその美しきエネルギーの塊に、文字通り街中で遭遇しました。
新緑の風が吹き抜ける丸太町通り。
どこからともなく、地響きのような低い掛け声が聴こえてきました。
「ほいっと、ほいっと、ほいっと、ほいっと……」
京都のお神輿特有の、あの独特な掛け声です。
音のする方へ引き寄せられるように歩いていくと、大きな丸太町通りの交差点に、
光り輝く大きなお神輿が姿を現しました。

交差点の真ん中で、一際大きな声が響き渡ります。
「ま〜わせ、ま〜わせ!」
その瞬間、大勢の担ぎ手たちの手がピシッと一糸乱れぬ美しさで揃い、
重いお神輿が天高くへと持ち上げられました。そのまま豪快に、
ぐるぐると旋回を始めるお神輿。
火花が散るような熱気の中、
担ぎ手たちの呼吸と掛け声がぴたりと重なる瞬間、
その場にいる全員の気持ちまで一つになっていくようでした。
見ているだけの私の心まで、いつの間にか高揚し、
理屈抜きでワクワクとした楽しさに包まれていきます。

もちろん、お神輿がダイナミックに回っている間は、
大通りの車はすべて一時停止。
信号を待つ一番前の車は、目の前で大迫力の神事が繰り広げられる、
まさに臨時の「特等席」です。
「もし急いでいるときだったら焦っちゃうかもしれないけれど……(笑)」
なんて思いつつも、そんな風に街全体がお祭りの熱量を優しく受け入れている風景が、
なんだかとても京都らしくて愛おしく思えました。

お神輿を見送ったあと、神社のある寺町通りへと足を向けると、
そこにはずらりと並ぶたくさんの屋台。
ソースの香ばしい匂い、子どもたちの笑い声、これぞ「THE・お祭り!」
という、どこかノスタルジックで華やかな風景が広がっていました。
ふと足元を覗くと、いつの間にか小さな紫陽花(あじさい)の花が、
ほんのりと色づき始めています。
かつて暗闇の中にいた怨霊を、何百年もの時間をかけて、
こんなにも笑顔にあふれた「初夏の風物詩」へと昇華させてきた、
京都の人々の祈りと知恵。

お神輿を支える無数の手と、
門前で静かに色づき始めた紫陽花。
かつて人々が恐れた悲しみを、
長い時間をかけて、
こんなにも温かな風景へと変えてきた京都という街。
その優しい吐息が、新緑の風とともに街を抜けていった、初夏の朝でした。




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