智積院。墨の匂いに包まれて、紫陽花に恋した奇跡の1時間

智積院、紫陽花 京在住ノート


詩仙堂や東福寺へ向かった日は、
見事に道を間違えてUターンした私ですが(笑)、
今回は違います。

事前にルートをしっかり確認して
出発したおかげで、
なんと一度も迷わず智積院へ到着できました。

智積院には、参拝者が無料で利用できる
ありがたい駐輪場があります。

入り口を入ってすぐの左手に御朱印をいただける
「朱印所」があるんですが、
その建物のちょうど真裏にあたる場所に、
バイクを停めるスペースを見つけることができました。

東福寺のときの「あんなの絶対に分からない(笑)」
という教訓を活かして、
今回はスムーズに愛車を停められ、
幸先の良いスタートです。

無事にバイクを停めて歩き出すと、
すぐ目の前が朱印所でした。

神社仏閣を巡るとき、
本当はお参りをすべて済ませてから
最後に御朱印をいただくのが
一般的な習わしなのですが、
今回は駐輪場の目の前というロケーションもあり、
「よし、まずは一番に御朱印をいただこう!」と、
ちょっぴり順番を変えてみることにしました。

受付を覗くと、今の季節限定の、
とても美しくて華やかな
「書置き(紙でいただくタイプ)の御朱印」が
目に飛び込んできました。

お花が大好きな私は一瞬、
その美しさに心を奪われて
誘惑されそうになったんですが――。

「でも、智積院へお参りするのは
今回が初めてだし、やっぱり最初は、
基本となる御朱印を手帳に直接書いていただこう」
と思い直しました。

そうして、目の前で
丁寧に直書きしていただいた御朱印帳。

これを受け取って開く瞬間、私にはささやかな、
けれど大好きな贅沢な楽しみがあります。

それは、ページを開いた瞬間に、
ふわっと鼻をくすぐるように漂ってくる
「墨の匂い」です。

御朱印を受け取ったあと、
私は思わず何度も御朱印帳を開いてしまいました。

理由は単純です。

書きたての墨の匂いが大好きだから。

ページを開くたびに、ふわりと立ちのぼる墨の香り。

不思議なことに、その香りを吸い込むと
心のざわつきが静かに落ち着いていきます。

お寺の空気を少しだけ
持ち帰らせてもらったような気がして、
私はこの時間がとても好きなんです。

御朱印帳を大切にバッグに仕舞い、
いよいよ境内へと進みます。

お目当ての紫陽花苑の場所は
あらかじめ知っていたんですが、
参道の通路脇を歩いていると、
私の目に嬉しいサプライズが飛び込んできました。

なんと、凛とした高貴な紫色の
「桔梗(ききょう)」のお花が、
咲いていたのです。

紫陽花ばかりを意識していたので、
この初夏の出逢いは
花好きの私にとって最高のプレゼント。

思わず足を止めて、
その美しい姿にみとれてしまいました。

そのままゆっくりと新緑の境内を進んでいくと、
前方の開けた場所で、お二人のお坊さんが
お掃除をされている姿が見えました。

「あぁ、きっと昨日、盛大に行われた
『青葉まつり』の片付けをされているんだな……」

大きなお寺のお坊さんというと、
普段はどこか遠い存在のように
感じてしまうことも多いんですが、
こうして境内を美しく保つために、
まつりの翌日に一生懸命に作業されている姿を
間近で拝見していると、なんだか不思議と、
とても身近な存在のように思えてきました。

不思議だったのは、お二人の周りだけ
流れる空気が少し違って見えたことです。

慌ただしさはまったくなく、穏やかで柔らかい。

境内の静けさそのものが、
人の姿になって歩いているようでした。

その穏やかで柔らかい空気を感じながら、
まずは本堂へと向かい、静かに手を合わせて
今日ここへ来られたことへの感謝をお伝えしました。


本堂でのお参りを終え、いよいよ楽しみにしていた
「紫陽花苑」へと足を運びます。

そこはまさに、今を盛りに咲き誇る
可愛らしい紫陽花たちのパラダイスでした。

定番の淡いブルーや紫のものから、
ちょっと珍しい形をしたものまで、
たくさんの種類の紫陽花が、
瑞々しい緑の葉の間から「私を見て!」
と言わんばかりに顔を覗かせています。

写真が上手な方なら、きっとこういう場所でも、
お気に入りのアングルを見つけて
「サクッ、サクッ」と素敵な写真を撮って、
スマートに帰られるのかもしれません。

けれど、私はカメラの腕前には
あまり自信がありません。

「どうやったらこの可愛さが写るかなぁ」
「あ、こっちの子も可愛い!」
なんて試行錯誤しながら、夢中になって
シャッターを切り続けてしまいました。

ふと時計を見て、私は我が目を疑いました。

なんと、ただ紫陽花を撮っていただけなのに、
気づけば丸々「1時間」も
その場所に立ち尽くしていたんです……!💦

「うわぁ、サクッと撮るつもりが、
時間を忘れて没頭しちゃった」と苦笑いしつつも、
自分の心がそれだけ素直に
「楽しい!」と叫んでいた証拠、
「楽しかったからオールOK!」と、
大満足でカメラを仕舞いました。

紫陽花苑をあとにして、最後に境内の一角の
青紅葉の中で少しだけ一息つきました。

前日の賑やかなおまつりの余韻を残しながらも、
今日の智積院には、どこまでもゆったりとした、
贅沢な時間が流れています。

ときおり、新緑の木々を揺らしながら
「さらさら」と吹き抜けていく六月の風が、
お散歩で少し火照った私の肌に、
本当に心地よく触れていきました。

智積院で過ごした時間を振り返ると、
心に残っているのは
豪華な宝物でも立派な建物でもありません。

御朱印帳から漂う墨の匂い。

青葉まつりの翌日を静かに整えるお坊さんたちの姿。

そして夢中でシャッターを切り続けた紫陽花たち。

どれも派手ではないけれど、
不思議なくらい心をゆるめてくれるものでした。

帰り道、バイクで風を切りながら、
「今日は本当に良い時間だったなぁ」
と何度も思い返していました。

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お釈迦様の足跡で京都府には14ヶ所あるそうですよ
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2026年6月


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